回顧録 ② あくまでも普通のひと

高校生の頃は、背伸びをして、

完全に普通の人にとけ込み、

占い好き女子を斜めからみていた僕も、それ以前。

中学生の頃は神秘的なものに惹かれていた。


とはいえ、友人たちから後ろ指をさされる覚悟がなかったので、

あくまで僕は普通です。と外見だけは取り繕っていた。


けれど、その裏では、

たとえば『孔雀王』などの、

呪文を唱えて魔物と戦うような、

それでいて、ちょっとエッチなのとか、

神話の神々が出てきて戦うストーリーなマンガを好み、

読みふけっていた。


だれにも内緒で買ったタロットカードも、その延長線上にあった。

これ買ったら、いろんなこと分ちゃって、魔法使いみたいになれるかも。

そんな淡い妄想を抱き、生唾をのみ、震える手で、田舎街の本屋にて購入したものだった。




けれど、この類の出版物は、当時、市民権を得ておらず、

クラスの中でも、ごくマイノリティというか、

いわゆるオタクというか、そういう人たちが好きな嗜好品で、

「ちょっと変な人」を象徴するものだった。


あくまで「普通の人」枠から、ハミ出したくなかった僕は、

ほんとうは、そっち側の嗜好くせに、

周りの目を気にして、普通の人のフリをする小心者だった。


たとえば、友人が遊びにきても、

バレると確実にバカにされ、

次の日から「キモたろっと」みたいなあだ名がつくことを恐れた僕は、

学習机のカギがかかる引き出しに隠し、素知らぬフリをしていた。

さらに、タロットカードばかりか、

黒魔術、白魔術の本も入っていたことは、もちろんトップシークレットだった。


その年頃ならだれでも、基本的に好奇心旺盛で、

他人の家の引き出しや扉をむやみに開けたがる傾向があるが、

友人たちも例に漏れず、

いつもカギが掛かっている引き出しに興味を持ち、

なんとか開けてやろうと必死だった。


だが、意地でも開けようとしない僕の不自然な態度から、

友人たちには、ずっとアダルト雑誌かなにかを隠していると思われていた。


このように、いわれのない誤解を受けても、

占いとかやってる変なやつ、とだけは思われたくなかったのだ。


田舎の力のない男子中学生が、

自分の嗜好を隠しつつ、

思春期の悩みから救いを求めた先がタロットカード。


女子か。というツッコミもありそうだが、

本当のことなので、あえて書いておこうと思う。

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