回顧録 ① フリだらけのあの日

けっきょく、みんな自分のことを知りたいんだな
でももし、ほんの少しだけ、他人を理解しようと思えば、
その悩みも軽くなるのに


今でこそ、一丁前にそう思う僕も、ほんの数年前までは違った。

だから、偉そうにヒトのコトはいえない。



思春期も終わりに近づき、高校も卒業間近になった頃。

僕は、占いに振り回されるなんて、ダサイと思ってた。


雑誌や朝のテレビでよく目にする「今日の運勢」なんてばかばかしいと思ってた。

ラッキーカラーやラッキーアイテムなんて、自分のセンスで決めればいいと思ってたし、なにより、占いに振り回される人生なんて、なんか虚しいし、何かにコントロールされてるみたいで、カッコ悪いと感じてたから。


むしろ当時の男子高生なら、たぶんそれが平均的な考えというか、少なくともそういう風潮はあって、もれなく僕もそれに合わせていた。


その頃、よく友人と入り浸っていた海近くの喫茶店があった。その店のマスターは、当時30歳ほどで、ちょっとした不良感が漂っていて、僕らの間では理想的な兄のような頼れる存在だった。それぞれ卒業後の人生に不安を感じて、人生相談がてら通い詰めていた。


その喫茶店から、潮の香りがする道を挟んだ向いに、制服を女子高生たちが行列を作っている店があった。その店が、占い師がマスターを務める喫茶店であることがわかったのは、数ヶ月あとのことだった。


ウワサによると、500円でワンドリンクを注文すると、もれなくマスターに占ってもらえるらしく、当たると評判で、先輩から後輩へ。後輩から、そのまた後輩へと口コミで伝えられ、もはや都市伝説になっているお店らしい。ちなみに、卒業してから10年ほどたった頃、30歳くらいの時分に近くを通ったら、学校帰りの女子高生たちは、まだ列を作っていた。


今思えば、片田舎の海沿いにあるさびれた商店街にもかかわらず、長年にわたって女子高生の行列をつくってしまう占い喫茶のマスターは、相当やり手で尊敬すらできる。

だが、当時の僕は、よく知らない「占いの世界」を斜めから見下して、卒業を目前に、不安にゆらぐ自分の心をごまかしていた口なので、そんな女子高生の列を横目に、

オレはあいつらなんかと違う

くらいに息巻いて、悪友と喫茶店に立てこもってタバコをふかしていた。



じつは、中学生の時、友人たちには内緒で、タロットカードを買ってたことを棚にあげて。

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