回顧録④ 運命とか宿命とかを想う

祖父の仕事だった富山の薬売りを継ぎ1年が経っていた。

年間1700件も他人の家を訪問すると、

そのうち、ある共通点に気づいた




玄関が散らかっていると、

その家の人は、性格が雑だったり、家計がうまくいってなかったり。

逆に、玄関がキレイな家の人は、往々にしてものごしが柔らかかったり、

金銭的にもゆとりがあったりする。


あるいは、大きく立派な建築の家ほど、

たいていは廃れ、住む人がいなくなり、

たまに遠くから孫たちが掃除しに来ていたり、

かろうじて住んでいても、収入は少なくなり修繕、維持が追いつかず、

ツタだらけの、怪奇な雰囲気になってたりする。


まあ、考えてみれば当たり前なのかもしれないけど、

玄関のありさまから、その家が抱えている事情だったり、

家族の問題だったりがなんとなく伝わってきたりする。


もっと広い範囲を意識してみると、その家の一帯。

土地レベルでも、廃れた土地、活気のある土地があることに気づく。


祖父が売薬を始めたときは、

もちろん、その当時ニーズが高かった地域を狙ったわけで。

ニーズが高いっていうのは、

薬を買いにいきたくても当時はドラッグストアもないし、田舎になると薬局も遠い。

冬は雪に閉ざされ、家から出ることもままならない。

というような辺境の地とか、田畑に囲まれた農家なんかに、

富山の薬売りは重宝された。




さらに駅周辺でも置き薬のニーズはあり、

とくに商売をやっている家などは、仕事で手が離せないので、

体調を崩したときに、家を留守にして、いちいち医者や薬局にいくよりも、

家にある薬箱からすぐに薬を出してきて飲める。

それに加えて、ネットどころかテレビもあまり普及してなかった時代だったから、

情報が極端に少なく、全国の家庭を訪問する薬売りの、土産話を聞きたくてしょうがいない

という、今となっては意外なニーズもあったりしたらしい。


祖父の時代には、


薬売りさん。今日は雪がひどいから、まぁうちに泊まっていってください。
酒でも飲みながら、いろんな土地の話もゆっくり聞きたいし。


というようなこともあったらしい。

祖父の話によると、そうした街には、その昔、芸者がたくさんいて、

飲食店も繁盛し、それは賑やかだったらしい。

だが、今となっては見る影もなく、

高齢者ばかりの街となり、一人暮らしの老人がなくなれば、

住む人もいなくなった家だけが、寒々しく軒を連ねている。



家も土地も、祖父が商売を始めた頃とは、ずいぶん様変わりし、

田舎だった地域が住宅地となって栄え、

繁華街だった通りは、人まばらとなっていた。

時代の流れといえば、それまでなのだろうけど、

祖父の話と現状を重ねてみると、

いつの日か、お客さんの家でみたカッコイイ占いの表のことも思い出されて、

何か、気が枯れているというか、流れが移ろうというか、

人間と同じく、土地にも運気の流れみたいものがあって、

栄枯盛衰を繰り返してるような、なんとなくそんな気がした。


でも、このときはどうしてそう言えるのかもわからなかったし、

風水という言葉自体も知らなかった。

でも、興味だけは日に日に膨らんで、どうしてもその理由を知りたいと、

強く思うようになっていった。

高円寺『かぎねこ亭』占い師

生活に活かす占いの使い方

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